朝日新聞 平成14年12月7日掲載
廃タイヤ、「北」では燃料  昨年からNGOが無償提供
座礁貨物船、積み荷はチップ 石炭なみの発熱量 


 産業廃棄物の廃タイヤを細かく切ったチップが、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に続々と
送り込まれている。深刻なエネルギー不足に直面する同国の火力発電所などの燃料として利用さ
れている。日本のNGO(非政府組織)が昨年4月以降、無償で提供し始め、これまでに計2万5千d
が船積みされたという。

 茨城県日立港で5日に座礁し、覇油が流出した北朝鮮船籍の貨物船「チルソン」(3144d)は、
廃タイヤチップを運ぶ途中だった。愛知県衣浦港などで約1200d日立港で1100dを積んで9日に
北朝鮮に戻る予定だったという。

 無償提供しているのは「人道支援NGOレインボーブリッヂ」(事務局・東京)。代表は、世界
宗教者平和会議日本委員会の評議員などを務める聖学院大学(埼玉県上尾市)の飯坂良明学長。
99年5月、アジアの貧困国への人道支援を目的に発足した。北朝鮮への支援では風力発電所の建
設計画も進めている。同NGO事務局によると、チップ1`当たりの発熱量は約6700`カロリーで、
石炭とほぼ同じ、重油の約70%に当たるという。

 北朝鮮側と話し合うなかで「廃チップを送ってほしい」と希望され、平が訪れたところ、3年
前から民間への電力供給はほとんど止まった状態だったが、「支援開始後は約2万8千世帯に毎日
夕方2時間送電できるようになった」と報告された。

 製鉄所の支配人は「暖房やテレビも使える」と喜び、環境への影響について「脱硫装置を取り
付け、環境対策にも留意している」と述べたという。同NGOは、茨城県内などの廃棄物中間処理
業者から、チップを1d当たり100〜400円で買い、日立港や衣浦港から毎月1千〜2千dぺースで
積み出している。航経費などを含めて、これまでに約1億2500万円を支出したという。

 鹿島税関支署日立出張所によると、日立港で作年8月から北朝鮮向け廃タイヤチップの輸出が
始まった。昨年は貨物船4隻で6021d、今年は10月末現在で9隻で1万109d財務省のまとめで
は、廃タイヤチップを含めたゴムくずの北朝鮮向け輸出量は全国で昨年約7万9千d。前年比4倍
と急増している。

 朝鮮単島エネルギー開発機構(KEDO)は北朝鮮の核開発計画を非難し、今月から同国への重
油供給を凍結。同NGOの小坂浩彰事務局長は「廃タイヤチップの需要は高まるだろう」と話す。

 外務省北東アジア課は「民間の貿易活動に口を挟むことはできない」と静観している。

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